柴胡加龍骨牡蛎湯
柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)という漢方薬、私もよく使いますし、自分でも服用します。
このいかにもいかついイメージは名前の中に「龍骨」と入っているのも関係しているでしょう。
もちろん本当に龍の骨が入っているのではありません。
昔は龍の骨ならず、マンモスの化石を使用していました。いまではマンモスは使えませんから牛など大型の哺乳動物の骨を使用して
います。
でも、どうしてわざわざそんなものを昔の人はお薬として用いたのでしょう。
今の科学ではカルシウムとして精神安定など、その効能が証明されているのですが、当時はそういう知識もなかったはず。
ここで柴胡加竜骨牡蠣湯のことを少し紐解いてみると・・・この漢方薬は漢方薬の分類の中で『安神剤』に属しているんです。
むかしの人は重たいもの(つまりマンモス)を人体に入れることでこころが安心すると考えたのでしょう。
実際、この漢方薬は精神安定にとても有効で、動悸をよく押さえてくれます。
むかしの人のイメージによる自然界の治療薬の選択が現代の科学で証明される。これってすごくないですか?
まさに数千年前の古人の神秘な能力を垣間見るところです。
古人は重たいものをからだに入れると心が安定する、つまりからだの重心が下がると腹が座ることを知っていたのです。
こころの本来の居場所が胸ではなく、おへその下(丹田)にあると感覚的につかんでいたのでしょう。
さまざまな情報に翻弄される現代。
時には目を閉じて、おへその下を意識しながら深く息を吐く。
瞑想ならぬ迷走神経の活性化こそこの時代を生き抜く処世術なのかもしれません。
(・・・迷走神経のお話は次回に)
悠 心身クリニック 中澤 武志