加味逍遙散
加味逍遙散(かみしょうようさん)。今回はこの漢方薬についてのエピソードをお話ししましょう。
漢方薬には昔の偉い先生方が、「このお薬はこういう人に効くんだ」と代々言い伝えてきたものがあります。
加味逍遙散はそういう点ではいささか誤解を招いているお薬だと私は思うんです。
先日、ある患者様に加味逍遙散を処方したところ、
「私はそんなにヒステリックではないんです!」とのこと。
確かに漢方薬の本にはよく、『加味逍遙散は元来嫉妬深く、訴えの多い更年期を中心にする女性で、顔を赤くして目を吊り上げて怒る人に良い』とされているのです。
これはおそらく漢方の先生に昔から男性が多く、自分の処方が「効いた」と言わずに、次から次に訴えを変える女性患者様に批判的な印象を持ったためではないかと思うんです。
ですから私はその方にこう説明しました。
「加味逍遙散は『肩こり』を中心とした苦痛を、なぜか敏感に感じ取っている人たちなんです。時にはその苦痛が体の疲れであったり、耳鳴りであったり、めまいであったりするのです。けっしてヒステリックな人のお薬ではありませんよ」
なんとなく腑に落ちない感じで帰られたその患者様。
2週間後の受診時には「なんか身体が楽になって気持ちが落ち着いた感じです」とにこやか。
ほっと胸をなでおろす私を横目に、矢継ぎ早に「今度はシミをきれいにしてもらおうかしら」・・・
すぐに打ち解けて話が楽しいのはありがたいのですが、私にとって難しい宿題はお手柔らかにお願いします、そう思った次第です。
悠 心身クリニック 中澤 武志